はじめに
斜線堂有紀の『回樹』を読んだ。 読みながらずっと思ってたのは、 「この作者、死体の処理方法のことをずっと考えてるんじゃないか?」 という妙な感覚だった。
もちろんグロい方向じゃなくて “死んだあとに残るもの” とか “遺された側の感情” に異常なほど関心がある感じ。 短編集なのに、どの話もテーマの根っこがつながっている。
で、読んでいてもうひとつ強く思ったのが終わり方が総じていけ好かない。
嫌いというより、「どう終わったかはオレは示さないから、斜め上からテメーら読者考えろよ」とでも言われているような、あの投げっぱなし感。
しかも、 “作れないから投げた” じゃなくて “締めようと思えば締められるけど、あえてしない” という空気がある。その “あえて” が、読者としてはちょっとモヤッとした。考える余白と言えば聞こえはいいけど、こっちは別に毎回哲学したいわけじゃない。
読んでいて一番好きだったのは「奈辺」
そんな中で、いちばん刺さったのは 「奈辺」。
白人・黒人・宇宙人という三者の組み合わせなのに、 内容はめちゃくちゃ素朴で、友情の話として地に足がついている。
他の短編が “愛とは何か” “死とは何か” みたいな重いテーマを抱えている中で、 奈辺だけは “生きてる側の話” をしてくれる。 読んでいて肩の力が抜けた。
そして何より、 唯一のグッドエンドっぽさがある。
やっぱり自分は、 投げっぱなしエンドより ちゃんと着地してくれる話のほうが好きなんだと思う。 読後に「はい終わり!」って突き放されるより、 少しでも温度が残るほうが性に合う。
各話のざっくり一言あらすじ
(※ネタバレなし・雰囲気だけ)
「回樹」
死者を飲み込む木に愛情が転移する世界。 愛していたかどうかを外側から測られる恐怖がある。
「骨刻」
骨に文字を刻む文化の流行りと衰退を歴史を紐解くように進んでいって最後に繋がる。
「BTTF葬送」
映画に“魂”が宿る世界観。 作品そのものをどう弔うかという発想が面白い。 映画好きなら確実に刺さる。
「不滅」
遺体が腐らなくなる世界で、 死者をどう扱うかという倫理観が露骨に試される。 生きてる側の価値観がむき出しになる。
「奈辺」
白人・黒人・宇宙人の三人が友情を育てる話。 設定の奇抜さに反して、いちばん温かくて素朴。
「回祭」
「回樹」の続編。 自分でも気づいていなかった感情が、死後に露わになる静かな痛み。
全体を通して思ったこと
SF感はあんまりないけど総じてまあまあよかった。
『回樹』は、死体の扱い方を通して 「人は他人をどう扱うのか」 「愛はどこに残るのか」 をずっと問い続けてくる短編集だった。
ただ、個人的には “問いっぱなし” の終わり方が多くて、 そのあたりは好みが分かれると思う。 自分はどうしても、奈辺みたいに 読後にちょっと温度が残る話 のほうが好きだと再確認した。

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